■ 元担当教師の明察
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【さみしさのゆくえ】 (ろくでなし:いまいさん)
【happy end.】 (酔の小文:肴さん)
【月と花の廻天】 (colerscheme:椛さん)
「他に好きな娘が出来たから別れて欲しい」
「そう」
「お前は一人でも大丈夫だろ?」
「・・・そうね」
「あの子は弱いから・・・俺が守ってあげたいんだ」
「・・・・・・・・・」
「お前は強いから俺がいなくても平気だもんな」
「えぇ」
***
暗くなってきた夕暮れの里をトボトボと歩く。
夕日が沈んできてキレイだ。
でも今の私には寂し過ぎる・・・
「はぁ・・・」
この間も同じ理由で別れたなぁ・・・
・・・いや、振られたってのが正解か。
しかもこの間はサイに見られててさ。
すごい怖い顔で「へぇ・・・あの程度でいいんだ」とか言われて・・・
「サクラは強くないだろう?前の人もだけどあの人も何もわかっちゃいないんだな・・・僕は今まで七班の一員として君を見てきた。だから分かるんだよ。サクラは強くない。なんで・・・ナルトやサスケくんとくっつかなかったんだ。君はナルトやサスケくんじゃないとダメだろう?」
とか好き勝手言ってくれちゃってさ!
でも・・・
サイには見抜かれちゃってたなぁ・・・
彼氏よりサイの方が私のこと分かってくれてるのね・・・
あ・・・ダメだ涙出そう・・・
「サークラ」
「!?」
聞き覚えのある声に呼ばれて驚く。
「カカシ先生!?どうしてここに・・・」
「たまたま・・・ね」
たまたまねぇ・・・
道端に場違いな感じで座ってますけど・・・?
・・・気まずい。
見られたかしら・・・さっきのやりとり。
チラッと見ると先生はいつも通りニコニコしている。
「サクラ、俺で手ェ打っとく?」
「はぁ?そんなところに座って何を言っているのよ・・・」
上目遣いが可愛くてちょっと憎たらしい。
無駄に顔がいいもんだから上目遣いとかズルいわよね、先生は。
不覚にもドキッとしてしまった。
背の高い先生の目線が低くていつもと違う感じがなんだかおかしかった。
「・・・今ならさらわれてあげるけど?」
ドキッとしてしまったことがくやしくて軽口を叩く。
手を差し出すと先生も手を伸ばしてきた。
「よっ・・・と」
軽く引いて立ち上がらせる。
「ありがと」
「いーえ、どーいたしまし・・・」
立ち上がった先生に抱きしめられる。
「カカシ先生・・・!? 」
「よしよし」
抱きしめられたまま背中をポンポンと優しく叩かれる。
「一体何のマネよ?」
「いやーなんかよしよししたくなっちゃった」
「ナニソレ」
先生の胸は心地良い。
まだ子どもの頃に守ってもらって抱きついたことを思い出した。
ホッとするのは今も昔も変わらないみたい。
あの頃は先生がしゃがんでくれていたなぁ・・・
他の奴にこんなことされたらぶん殴ってるところだけど、先生だと小さい頃からの安心感で全く嫌じゃない・・・
「ナルトやサスケとくっつかなかったのは二人のためだろう?」
「え?」
突然何を・・・
ハッとする。
「・・・さっきの見てたわね?」
先生を見上げると困り顔だ。
眉がハの字に下がっている。
「まさか・・・この間サイに言われていた時も・・・」
「ごめん、でもそれは本当に偶然」
やっぱり!
「サイくんの言うとおりサクラはそこら辺の奴じゃダメだろうなぁ」
「っ!」
「サイくんはサクラをよく見てる」
感心したように頷いている。
「ナルトともサスケともくっつかなかったのは二人の仲が、いやお前たち三人の仲がこじれないようにって思ったんだろう?」
「・・・・・・・・・」
私はまたうつむいてしまう。
先生の言ったことが当たりだから。
「ナルトとサスケ、どちらからも告白されてた。それも知ってる」
先生の言葉に驚いて顔を上げる。
「・・・なんで知ってるのよ!ってそっか・・・噂になってたわよね」
「サクラは優しいなぁ・・・」
「そんなんじゃないわよ!そんなんじゃ・・・」
「ナルトのこともサスケくんのことももう兄弟や家族みたいに思ってるのよ。手のかかる弟とよく出来た兄って感じなの!恋愛感情なんてとっくの昔に・・・!」
自分の言葉にハッとする。
これじゃ昔は恋愛感情があったって言ってるようなものじゃない。
実際は二人のことをどう思っているのか自分でも分からなくなってしまっていた。
分かっているのは二人を失いたくないという気持ちだけだった。
だから二人からの気持ちには応えなかった。
傲慢だと思われてもいい。
何様なんだと実際にすれ違いざまに言われたこともある。
ナルトもサスケくんも今や里になくてはならない存在だ。
そんな二人からの告白話は噂になってしまった。
もちろん私が断ったことも。
でも誰にどう思われてもいい。
何を言われても構わない。
二人の笑った顔が見られなくなることより怖いことは私にはないのだ。
「と、とにかく!ナルトとサスケくんのことはいいの!・・・って、せんせ・・・!」
カカシ先生の腕に力がこもる。
見透かされているようで無性に腹が立った。
「は、離してよ!こんな街中で・・・」
「こんな街中で別れ話をしてたのはどこの誰?」
「う・・・」
「それにもう暗いし大丈夫だよ」
「・・・・・・・・・」
「サクラは優しいなぁ・・・二人を思ってどちらともくっつかなかったんだよね」
「そんなんじゃないわよ。・・・自分のためよ」
そう。ナルトとサスケくんに避けられるよりずっといい。
だから私はズルい方法を選んだ。
「・・・分かってるよ」
今度は頭をポンポンされて涙が込み上げてくる。
先生があまりにも真剣な顔しているから。
全て分かってるって言ってくれているような気がして・・・
「先生、ありがとう」
私は先生の背に手を回して抱きしめた。
「うん。だから・・・俺で手を打ちなよ」
嬉しそうに言ってくれる先生。
「・・・考えとく」
すると先生はガバッと離れて肩をつかんでくる。
「ここは『そうね・・・そうする』って言う所デショ!?」
「そんな簡単な女じゃないのよ」
固まっている先生。
「・・・失礼しました」
「ふふっ」
ガックリと肩を落とす先生を見ていると気持ちが楽になるのを感じた。
「でもさ、俺の前なら泣けるデショ?」
整った顔で笑うのは反則だといつも思う。
それに悔しいけれど先生の言うとおりなのだ。
先生の前でなら泣ける。
強がらないでいられる。
先生はずっと私を見守って来てくれていた。
私の弱いところも、意地を張ってしまう可愛くない性格も全て受け止めてくれる気がする。
−END−
Twitterで仲良くしてくださっているお三方と「同じお題で話をそれぞれ書いたらどうなる?」ということで書き上げたお話でした。
【お題】
・ナルトともサスケとも結ばれなかった未来
・モブと付き合うサクラはサイに「その程度でいいんだ」と言われる
・そんなサクラはカカシ先生に「そろそろ俺で手ェ打っとく?」と言われる
同じお題なのに四者四様で内容が全く異なりとても面白いです。
ぜひ他の方の作品も読んでみてください。
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