■ 機密書庫での出来事

キバ→サクラ なお話。 任務で機密書庫に行ったキバとサクラは・・・

「見つかったか?」
「・・・まだ」
「ったく、どこにあんだよ」

「・・・あんたねぇ、まだ探し始めたばっかりでしょーが」
「だってよー。こんな任務、ヤル気出ねーよ」
「こんな任務とか言わないの!!」

「そうですよ、火影様の必要な本を探すという大役ですよ」
「・・・へいへい。分かりましたよー」


今日はサクラとリーと任務にあたっている。
里の図書館で蔵書探しだ。
探すと言っても普通の蔵書じゃない。
図書館の奥の奥にある、大きい金庫みたいな部屋で古い蔵書を探していた。


カビくさくて息苦しい。
オレは鼻がいいからだろう。
そしてなによりこんな仕事、ダルい。

サクラは「こんなすごい場所、滅多に入れない!!」とか言って目をキラキラさせている。
探してんのも古い医学書だしな。
オレは全くキョーミない。
昔のエロ本でも出てこねーかな。

「サクラさん!!ちょっと来てもらえますか!?」
「はーい」


リーは真面目に本を探している。
てゆーか、あの二人だけで充分だったんじゃねーのか?この任務。
なんでこのメンツだったんだろ。


手元の本を棚に戻す。

サクラと一緒の任務なんてそうそうないから、実は今日が楽しみで昨日からワクワクしていたなんて、口が裂けても言えねェけど。


***
オレはいつからか目でサクラを追うようになっていた。


同期の女子はみんな、黙っていればそれなりに可愛い。
だけどみんな、揃いも揃って気が強い。

ヒナタだって見た目はおとなしいけど、結構ガンコだからな。
小さい頃から同じ班で一緒に生活してると色々分かって来る。


母ちゃんや姉ちゃんみたいに、気の強い女は絶対にゴメンだって思ってたんだ。
それは間違いない。
そう思っていたのにな。


その中で、なんでサクラなのか。
昔はイマイチ分からなかった。


だけど、ある日気が付いた。
サクラは気が強いくせに泣き虫なことに。


それも、自分の為でなく、人の為に泣いている姿を見る事が多かった。
仲間の為。
サスケとナルトの為だ。

スリーマンセルの班には、他の班には分からない絆みたいなものがある。
それはオレがいる第八班にもそういうものがあるから、サクラにとってサスケとナルトが特別なのは分かる。


里の女子の大半はサスケの事が好きだった。
例に漏れず、サクラもサスケが好きだったわけだ。


そしてサスケは里を抜けた。
追いかけるオレたちの前でサクラは泣いていた。


あの涙は、サスケに対して仲間としての涙なのか、それとも・・・。



その時なんだと思う。


オレがサクラを好きになったのは。


アホだよな・・・。
好きだって気付いた時には失恋してんだから。


***
サスケの為に泣いているサクラを見て惚れたんだと思う。
だから仕方がない。


そしてオレは仕方がないから諦めるなんてタイプではない。



時が経ってオレたちは成長し、強くなった。


サクラは医療忍術まで極め強くなっていった。

火影様の指導に必死でついていき、努力して修行している姿を何度も見かけた。

一体誰の為に強くなろうと思っていたのか。

それを考えるとちょっとツラい。
どう考えたってサスケとナルトの為だもんな・・・。


サスケが里を抜け、新しい七班が結成されてから、ナルトとサクラは良いコンビだった。
戦闘に関してはもちろん抜群のコンビネーションを見せていたし、お互いを信頼しているのが分かった。


オレは悔しかった。
班の絆には入り込めない。
それは分かっているはずなのに。

サクラはナルトをどう思っている?
仲間か?
姉弟?



それとも・・・。


そう、サスケの時と同じだ。
オレはサスケにもナルトにも嫉妬していた。



あいつらの関係性は仲間としての絆なのか、家族のような絆なのか。
・・・恋愛感情なのか。



この事を考えると、オレって小っせー男だなぁとつくづくイヤになる。


***
「・・・バ!!」
「ん?」


「キバ!!」
「キバくん!!」


「え?」
「それ!!開いちゃダメ!!」
「!?」

手当たり次第に本を取ってパラパラとページをめくっていたオレは、禁書の棚の前にいた。


「キバ!!」

サクラがオレの腕をつかんだ瞬間、本は手を離れて開き宙に浮いて、光を放っていた。


***
「う・・・」


ゴンッ

「いてっ!!」


なんだ?
狭いし真っ暗じゃねーか。

なんか・・・重てーし。

その重たい上に乗っているものに手探りで触れる。
なんだか柔らかい・・・。


「うおっ!!」

上に乗っていたのはサクラだった。
「おい!!サクラ!?」

慌てて肩を揺する。


「サクラ!!大丈夫か!?」
「ん・・・」


良かった・・・気を失っているだけだったようだ。

「キバ・・・?ここ・・・は・・・」
「わかんね。あの本なんかヤバかったのか?」
「そうよ!!あんた、なんで禁書の棚に!!」
「わ!!」
「きゃ!!」


サクラが動こうとしたけれど、狭くて身動きが取れない。
「何コレ、狭っ!!」
「サ、サクラ!!お、降りろ!!」
「え?あ、ごめんごめん」


もうちょっと申し訳なさそうにしろよ・・・。
つーか、上に乗っかられたままじゃ、オレが耐えられん。
・・・色々。

なんだよ・・・。
ちっともオレの事は意識してねーって事かよ、ムカつく・・・。


背を向けて座り直す。
お互いに背が当たって窮屈だ。
というか、そのくらいのスペースしかないから仕方ないんだけどさ。


「キバ、あんたが開いた本には、何か幻術がかかってたのよ」
「幻術!?」
「禁書の棚は触るなってあれほど言ったのに」
「・・・・・・」

ボーっとしてたんだよ。
・・・お前の事考えてたんだっつの!!


「ま、リーさんが今頃助けを呼びに行ってくれているだろうから大丈夫よ」
「おー」


全然怖がってねーし。

はー・・・。
オレって何なんだろ。

今だって一番傍にいんのに頼りにもされてねぇよ。
リーが助けてくれるとか・・・。



「!!」
サクラが背中に寄りかかって来た。


「はーー。任務中に幻術にかかるとか・・・。戻ったら怒られるかしら」

オレの事意識してたら、寄りかかってくるなんてしてこねーよな。
くそ・・・何か腹立って来た。


***
「おい」
「なに?」
「怖くねぇのかよ」

「別に」
「あっそ」

つーか、何を話せばいいんだよ。


「なぁ」
「なに?」
「この幻術ってオレらじゃ解けねぇの?」
「もうやってみた。けどダメだったからこうしておとなしく助けが来るのを待ってんでしょ」
「・・・そうスか」

「あのさ」
「・・・なに?」

「今日の任務、楽しみにしてたか?」
「へ?」

「・・・・・・」
「んー。任務じゃないと入れない場所で、古文書とか古い蔵書が見れるからって楽しみにしてたって言われればそうね」
「・・・そっか」

「サクラ」
「だから、なに?」
「お前、サスケとナルト、どっちが好きなの?」
「は!?」

サクラが寄りかかっていた背中から飛び起きる。

「ちょ・・・なんで!?デリカシーゼロね、あんたって!!何でそんな事聞いてくるのよ!?」
「・・・だよ」

「え?」



「・・・好きだからだよ」



「は?」
「オレがお前を好きだからだよ!!」

暗闇でも分かる。
サクラはポカンとしている。

そりゃそーだわ。


「キバが、私、を?」
「・・・・・・」


「考えた事もなかった」
「そーかよ」
オレは顔を背ける。

恥ずかし過ぎんだろ、勢いとは言え、飛んでもない事を言っちまった。


「んじゃ、ちょっと考えろ。どーせ、する事ねーんだし」
「何それ」
サクラが笑う。

そんな姿に不覚にもドキッとしてしまう。


「キバ」
「ん」


「キバから私に対してそんな雰囲気、今まで全く感じなかったんだけど」
「おー。ずっと隠してたからな」
「なんで」


「だって。お前の中にはサスケとナルトしかいないだろ」
「・・・・・・」

「オレの入るスペースなんて、ねぇじゃん」

うわ、なんだオレ。
ガキかよ。
いじけてんのか?


何も言い返さないサクラが気になり、振り返ってみる。

「!!」
ヤベ・・・。


泣きそうな顔してる・・・。


けど、泣きたいのはオレの方だ!!


って、バカか!!

好きな女泣かせてどーすんだよ・・・。



どこまでも情けねぇなぁ、オレ。

「サクラ」
「・・・・・・」
「ゴメン。言い過ぎたわ」
「・・・・・・」


「ちょっとそっち、寄っていいか?」
少しの間があって、無言でうなずかれる。

寄るって言ったって狭いから、少し近づくだけでもう体がぶつかる。

初めてこんなに間近でサクラを見た・・・。
思ってたより華奢だ。


スゲー怪力だから勝手なイメージで、しっかりした体格だろうって思っていた。


それに・・・
目が覚めた時から思ってはいたんだが・・・


気にしないようにしていたんだけど、サクラのにおいにドキドキする。


好きなヤツのにおいってなんでこんなに惹かれるんだろう・・・。
鼻が良過ぎるオレには、こうなると拷問だ。


ここで手なんか出したら終わりだよな・・・。

うつむいたままのサクラ。
髪で顔が見えない。


・・・うなじが全開なんですけど。


どんな顔をしているんだろうと気になってしまい、手を伸ばして耳元の髪をかきあげる。
「っ!!」
「うおっ!?」

サクラがビクッとする。
オレもつられて驚いてしまった。

「な、なにすんのよ!」
「え、あ・・・。すまん・・・、つい・・・」

つい、さわりたくなっちまった。

手ぇ出したら終わりって今思ったばっかなのに!

「キバの言うとおりよ」
「へ?」


「サスケくんとナルトの間で、どっちつかずな私は前に進めない」
「・・・そこまで言ってねーよ」


「気持ちは子供の頃のまま、サスケくんには置いていかれて泣いているばっかりの私」
「おい」


「なのに、ナルトの優しさに甘えてる嫌な女だわ」
「サクラ」


「二人は私を置いてどんどん前に進んで成長していくのに、私だけ子供の頃のまま」
「・・・やめろよ」


「前から思っていたことよ。キバに言われて自覚したの」
「・・・サクラ」

「こんな女の一体どこがいいわけ?」
怒ったような、泣きそうな顔でサクラが問いかけてくる。



「・・・オレの勝手だろ。人の好きなヤツのこと、悪く言うんじゃねーよ」


サクラを見ると、キョトンとしてやがる。


「・・・なんだよ」
「ふふっ」

あ、笑った・・・。

「悪くないわね、人に好かれてるって」
「おー。誇っていいぞ。オレが好いてんだからな」
「なんでえばってんのよ。変なの・・・っ!?」


「キ、キバ!?」
「いーから」
「いや、良くないし」
「・・・・・・」


オレはサクラを抱きしめていた。


あれ・・・?
暴れねーの・・・か?


腕の中でおとなしいサクラに驚く。


殴られる覚悟はしてたんだけどな。

「・・・苦しい」
「お、おぉ」


狭い上にくっついてるからな。

手を緩める。


「キバ」
「?」

「今何考えてるの?」


「いや・・・好きだなって」
「は!?」
顔を上げるサクラ。

「キバってそういうキャラだったっけ?」
「・・・うるせーな。思ったんだからいーだろ」


うつむくサクラ。


「・・・がと」
「ん?なんて?」


「あり、がと」
「!!」


やべぇ!!
超カワイイんですけど!!

「サ、サクラ!」
「なに?・・・きゃ!!」

オレは緩めていた手に力を込めた。


「オレ、やっぱサクラのこと好きだわ」
「キバ!?」


「オレのこと、考えてくれよ」
「・・・・・・」

「ナルトにもサスケにも、誰にも渡したくねーんだ」
「キバ・・・」


「オレ、本気だから」
「・・・・・・」


オレが伝えたいことは全部言ったつもりだ。

「・・・考えてみる」
「マジで?」
「私、キバのこと全然知らないもの」
「おお!」

「キバ、ありがとう・・・ね」


サクラがオレを見上げて笑う。



絶対に言うつもりのなかったことを伝えられた。
そしてこんな風に笑って答えてくれるなんて思わなかった。

言えて良かった。
もうそれだけで充分だ。


サクラがどんな答えを出しても、オレはそれを受け入れられると思う。

−END−



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